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わたしのブログ

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続きです。

毎日、昼間の行軍が続いた。夕方、名も知らぬ部落に入り野営だ。
 私は一軒の土で出来た農家に入り、何か食い物はないかと見たら、壁に天皇陛下の写真が額に入り、ぶら下がっていた。後ろを見たら、蒋介石の写真である。彼らの知恵であろう。私は棗の実を見つけ、食えるだけ食って持てるだけもって帰った。少しは精がつくだろうと思った。
 帰ったら思わぬことが待っていた。分隊長より・・・「片山、中隊本部に行け。」と言われた。中隊長使役と言って、点呼も不寝番も無い幸運な役で、本部に行ったら当番兵が待っていた。長靴を磨きながら、「これを呑め)と飯盒を置いていった。中を見たら酒が半分くらい入っている。一口飲んでみたらチャンチュウ アルコール分五十度、のどから腸までピリピリと気合が入り正気に返った気分になり、二口呑んだら寝てしまったようだ。一夜、休ませてくれたのだろう。中隊長はなぜこんなに私を心配してくれるのだろうか?体の衰弱、もう限界に近付いて・・・・ どうしてと考えることも出来なくなった。明くる朝、点呼が終わった頃、分隊に帰った。「使役ご苦労であった。」との事、軍隊という所は・・・化け物・・・である。
 また、行軍が続いた。今度は黄色い砂嵐で防塵眼鏡を掛けて進んだ。温度も相当上がって軍衣の肩に白く塩が吹いて。牛蒡剣の鞘が当る左の尻が非常に痛い。皮がむけ、赤めに鳴っているようだ。右の足のかかとは豆なんていうものではなく、赤めの中に砂が食い込んで痛みを通り越して感覚が無い。この腐ったような豆の後は現在も私の右のかかとに残っている。私はいつも水筒の中に
仁丹を入れて水には気を使っていた。下痢を警戒していたからである。


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